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麻生圭子の味みやび

2012年冬版 立春大吉 福は内

 節分、本来は4つあるんですよ。書いて字の通り、季節の分け目のことですから。立夏、立秋、立冬にも節分はある。
 なのに春だけ、行事を行うのは、やはり一年のはじまり、肝心要ということなんでしょうね。昔の人たちは、この分け目から、邪気は入り込んでくる、と信じていました。
 邪気の化身が鬼。この鬼を追い払うのに使われるのが炒り豆。水無月のときに食べる小豆もそうですが、昔は豆には邪気を払う霊力があると考えられていました。節分に限っていえば、まめは魔目とも書ける。それを炒るということは、鬼の目を射る、という意味も込められているようです。

 さて京都でもあちこちの神社で、その神社ゆかりの節分の豆まきが行われます。なかでも変わっているのが、吉田神社の節分祭。2日の夜に行われる、追儺式(鬼やらいの神事)は、少々、おどろおどろしている。もともと節分の儀式は、平安のはじめ、宮中で大晦日に行われていた追儺式にある、といわれています。そのオリジナルの儀式を垣間みることができるのが、この吉田神社の追難式です。
 山伏の法螺貝の音が轟くなか、四つ目仮面の方相師と童たちが、本殿前に結集。鬼は金棒を振り回し、一方の方相師は、陰陽師の祭文を読み上げ、という構図。止めに、殿上人が桃の弓で葦矢を放って終わります。

 京都というのは、千年の歴史を、伝承される祭事に見ることができる。本を紐解かなくとも、暮らしながら、身についていく季節の作法があるような気がします。
 だって東京に住んでいる頃は、私、豆まきすら省略していたんですから。それが白味噌を使った節分ゆかりのお菓子まで、手作りするようになった。節分の日にだけ、販売される法螺貝餅。今年はこれを真似して自分で作ってみることにしたんです。
 楕円に焼いたふのやきで、細く切った牛蒡と白味噌餡を斜めに包み上げ、法螺貝の形を模したものなんですが、ふのやきと白味噌餡の上品な甘さが、妙に合うんです。
 法螺貝巻きに手こずり、途中で春巻の形に変更になりましたが、いいんです。大事なのは豆の霊力。白味噌餡は、白豆と白味噌で、豆の霊力2倍です。春を巻き込むように包み、胃の腑に入れるなら、法螺貝などなくとも、今年一年、無病息災に暮らせるはず。そんな言い訳を夫にしながら、わが家、今年も無事に、立春大吉。春を迎えたのでした。

ふのやき(麩焼)
小麦粉を水でとき、薄くのばして焼いたもの。片面に味噌をぬり、巻いて食べる。

撮影=久保田康夫

麻生圭子さん

麻生圭子(あそうけいこ)

エッセイスト 1957年生まれ。80年代は作詞家として、小泉今日子、吉川晃司、徳永英明などの多くのヒット曲を手がける。96年再婚を機に京都へ。99年、町家に転居。95年大店の離れに転居。自然な生活が注目される。「東京育ちの京都案内」(文春文庫)、「京都がくれた『小さな生活』。」(集英社be文庫)、「麻生圭子の京できもの遊び」(集英社) 等、著書多数。料理は茶懐石を「柿傅」木村淳郎氏より学んだ。

http://keikoaso.exblog.jp/

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