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麻生圭子の味みやび

2011年夏版 夏の涼味と町家暮らし

 今年の夏もどうやら暑くなりそうですね。
 夏に生まれたせいか、子どもの頃から、暑いのは得意、だったはずなのに、体温を越えるような猛暑には、さすがに体調を崩すようになりました。寄る年波、というものかしらん。
 そんなわけで、今夏、二階に窓用クーラーをつけてしまいました。これでもう昔の町家暮らしには戻れなくなるかも、と心配したんですけどね、杞憂に終わりました。
 打ち水したり、夏座敷に一日花を飾ったり、風鈴、団扇、蚊取り線香の匂い、そんな夏の風情が恋しくて、夜以外はむしろいそいそ暑さのなかに身を置く私です。
 そういえば、猛暑に拮抗するように、毎年、盛大に行われる祇園祭、
「心が昂揚してるんでしょうな。暑いなんぞ思ったことは一度たりともありません」
 役員として参列しているYさんもそうおっしゃってましたっけ。
 そんな暑いときの、いちばんのごちそうは冷たいものですよね。日中、卵を焼けるほど熱くなった庭の飛び石にたっぷり打ち水をし、自前の風を起こしたあと、縁側できーんと冷やした番茶を飲むときの爽快さ。あれに勝るものはないような気がします。
 ハモの焼き霜、ハモ皮の胡瓜の酢のもの。葛きり、お素麺……、涼しい部屋では、おいしさも半減しますよ。京の先人の知恵はさすがです。たとえばハモ、滋養があるだけでなく、触感や白という色も涼味がある。蒲焼きとそこが違うところです。葛きりは水の流れを思わせる。素麺がなぜあんなに細いか。華奢なほうが目に涼やかだからでしょう。
 京料理がおいしいのは、そんな季節へのからくりがあるから。料理屋さんで目を凝らしてみると、夏は漆器の蓋やお皿などに水が振ってある。目で感じる涼味の演出です。葉っぱを器代わりに使うのも同じことです。
 さて白味噌というと、そのまったり感か、冬の食材のように思われがちですが、いえいえ。ハモと同じ、色の白さはそのまま涼味につながります。たとえば最近、流行のビシソワーズ、じゃがいもの冷製スープですが、生クリームの代わりに白味噌を入れて作ると、あっさりとした涼味になるんですよ。白味噌のまったりしたコクとじゃがいものざらざら感が意外なほどに合うんです。お薦めです。
 暑いからこそ見えてくる涼味。それが夏の醍醐味というものではないでしょうか。

撮影=久保田康夫

麻生圭子さん

麻生圭子(あそうけいこ)

エッセイスト 1957年生まれ。80年代は作詞家として、小泉今日子、吉川晃司、徳永英明などの多くのヒット曲を手がける。96年再婚を機に京都へ。99年、町家に転居。95年大店の離れに転居。自然な生活が注目される。「東京育ちの京都案内」(文春文庫)、「京都がくれた『小さな生活』。」(集英社be文庫)、「麻生圭子の京できもの遊び」(集英社) 等、著書多数。料理は茶懐石を「柿傅」木村淳郎氏より学んだ。

http://keikoaso.exblog.jp/

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